NEWS

お知らせ

2022年04月13日

第67回入学式 式辞

第67回入学式における校長の式辞を公開いたします。

 

   式  辞

 

 本日ここに入学式を挙行するにあたり、長島PTA会長・種田後援会会長、高橋同窓会会長。また、学校法人北海道科学大学から苫米地理事長・川上学長・髙島常務理事のご臨席を賜りました。コロナウイルス感染対策として、来賓の人数制限と、保護者の皆様にもお一人の参加とさせていただきましたが、ご理解とご協力をいただき、心より感謝申し上げます。

 この入学式に参列している新入生376名の本校への入学を許可するとともに、保護者の皆様に心からのお祝いと、本校を入学先として選んで頂いたことに感謝を申し上げます。大友学年主任をはじめ10名の担任、総計16名の学年団全員で、お子様達の高校生活を支えます。

 本校は1956年に開校し、今年で67年目を迎え、更に、北海道科学大学を中核とする学校法人は2年後に百周年を迎えようとしています。その、記念すべきタイミングに合わせて、本校は手稲前田に校舎を新築し、来年から新たな歴史をスタートさせます。学校説明会でもお伝えしたように、皆さんは、伝統ある中の島キャンパスと最先端の前田キャンパスの両方で高校生活を送ることとなります。温故知新の言葉の通り、伝統から学びつつ、新たな価値を創造すべく、教員と生徒、高校と大学が一体となって挑戦する新たな学校の主人公となるのです。皆さんは、全国的に実施される新しいカリキュラムに基づく本校独自の教育活動おいても、一期生となる大切な存在です。担任団はもちろん、大学を含めて教職員全体が皆さんをサポートします。新しいカリキュラムと評価のあり方については、生徒には様々な機会を使って、時間を掛けて理解してもらいます。また、保護者の皆様には入学式後の説明会の場で、大切なポイントについて説明いたしますので、よろしくお願いします。

 何より大切なことは、主人公は皆さん一人ひとりであると言うことです。皆さんに求めるものは、主体性・積極性、少々の失敗ではへこたれない逞しさ、そして、へこたれそうになっている仲間に手を差し伸べる優しさです。我々教員は、皆さんに可能な限りの機会を提供し、様々な選択肢を示し、頑張る生徒を最後までサポートするコーチであり、選手は君達自身であることを忘れないでください。

 残念ながらコロナ禍の影響が未だに続いています。昨年も、「あの時挑戦して本当に良かった」と思うこともあれば、「あの時もう少し違った考え方をしていれば結果は変わったかな」と思うことも正直ありました。今年も、そんなことの繰り返しかもしれません。しかし、大切なのはプロセスだと思います。そのプロセスにおいて、生徒・保護者・教員のコミュニケーションが少しでも深まることが、より良い結果を導くものと考えます。

 高校生活のスタートに当たり、皆さんにお話ししたいことがあります。私はこれまで多くの生徒と出会いました。「この世にはすごい奴がいる。この生徒には敵わないな。」と心から感じる生徒が何人もいました。そんな1人は、故郷である北海道で起業することが夢でした。そのためにも、彼は大学は敢えて東京に行き、全国から集まる様々な人物と出会い、自分の常識を覆す経験をしたいと考えていました。3年生の夏、志望校が決まり、オープンキャンパスの日程を知って親に行かせてほしいと頼みましたが、「我が家にそんな余裕はない」とピシャリと言われたそうです。さあ、皆さんならどうしますか。夏休み、彼は家にあったテントとシュラフを持ち、ヒッチハイクで東京を目指しました。4日がかりで東京に辿り着き、オープンキャンパスに参加し、河川敷に張ったテントの中で、この無謀な旅の最後の夜を迎えようとしていました。そんな時に一通のメールが届き、「応援してやれなくてゴメン。せめて、今晩はゆっくり休めるようにホテルの予約を入れておいたから移動しなさい」という母親からの知らせでした。その時の彼の気持ちは言わなくても共感できるでしょう。その後、彼はとことん努力し、可能な限りの奨学金も手に入れ、見事に第一志望を母校にしました。ところが、彼を待っていたのはコロナでした。全ての講義がリモートとなり、人との出会いもままならず、彼の抱いていた大学生活は実現しません。さて、皆さんならどうしますか。彼は考えた。授業がリモートで、行動制限があるなら今は東京にいる意味は無い。時間には余裕があるから、大学卒業後にと思っていた起業を先に始めよう。そのためには、人脈もあり、生活費も安い北海道に戻った方が可能性がある。彼は高校時代からの友人と共に札幌で起業の準備を始めました。彼らの取り組みは新聞でも、なんと「マツコの知らない世界」でも取り上げられました。マスコミの影響は大きく、全く知らない人からも投資の申し出を受けたそうです。対面授業の再開と同時に、彼は東京に拠点を戻し、海外の企業と連携してICT関連の事業にも挑戦するそうです。けして特別な人間ではありません。しかし、その行動力と決断力、失敗しても乗り越える精神力は並大抵ではありません。

 私が皆さんに伝えたいことは、もちろん、無謀な旅や学生による起業を礼賛することではありません。何かを成し遂げようとするとき、目的と手段を明確に分けることが必要です。そして、自分が信じる目的は簡単に放棄してはならない。たとえ、ある手段が成功をもたらさなくとも、目的そのものを諦めるのではなく、違う手段を探す努力こそが大切です。そして、手段は状況によって無数に存在する可能性があります。自分を成長させるために、敢えて見知らぬ環境に身を置こうと考えられるか。「東京は飛行機で行く所」という常識から逃れられるか。授業がリモートになって絶望するのではなく、自由な時間を得たと発想転換できるか。現実そのものは変わらなくとも、発想を変えれば現実は全く違うものに見えてきます。

 学校法人全体のスローガン、「+Professional」という言葉はすでに身近に感じてくれているでしょうか。自分の人生を切り拓く専門性を獲得する。その前提として、人間としての基盤となる資質能力を身に付ける。そうした取り組みを通して、将来の自分が何処で暮らし、何をやり、何をめざすのかが見えてくる。目標は自分で見つけ出すものであり、けして天から降ってくるものではありません。君達も、3年間の高校生活を通して、少しずつ自分の殻を破り、新しい自分を作っていってほしいと願います。

 終わりになりますが、保護者の皆様に心からお祝いとお礼を申し上げます。教職員一同、新入生全員が「北科大高校に来て良かった」と満足感を胸に卒業する日まで、全力で支え続けます。保護者の方々との日常の連携を密にし、いつでも本音で相談しあえる関係を作り上げたいと願っております。また、高校生になると、親に学校のことを話さなくなるのは昭和の時代と変わらない傾向があります。そんな時、親同士のちょっとしたコミュニケーションが安心をもたらしてくれることがあります。PTA活動をはじめ、学年や学級の懇談の機会などを活用していただき、親同士も心の友を見つけていただければと願っております。特に、先ほど申し上げた、新たな環境に身を置く決意をして下宿生活を始める生徒の保護者の皆さんの心配はいかほどかと推察いたしますが、これまでの下宿生を見ても、苦労した分だけ成長することは紛れもない事実です。是非、関係者の協力を強め、子供達を見守りたいと思います。

 改めて新入生の皆さんに伝えたい。高校生までは、あらゆる面で人間としての基礎が形成される時期です。部活動に例えれば、すべてが練習試合です。負けてもいい。しかし、負けから何を学ぶのか。負けたままでは終われないと本気で思えるのかが本当の勝負です。皆さんが北海道で育った若者らしく、スケールは大きく、懐は深い人間となり、自己ベストを目指し続けることを祈って、入学に当たっての式辞と致します。

 

                       2022年4月7日

                               北海道科学大学高等学校

                            校長  橋 本 達 也