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お知らせ

2024年04月09日

第69回入学式 式辞

第69回入学式における校長の式辞を公開いたします。

 式  辞

 本日ここに、北海道科学大学高等学校第69回入学式を挙行するにあたり、本校を支えていただいておりますPTA・後援会・同窓会の会長及び役員の皆様、学校法人北海道科学大学の苫米地理事長をはじめとする役員・学長・校長の皆様など、多くのご来賓のご臨席を賜り、また、保護者の皆様にもご出席をいただき、教職員一同、心からお礼を申し上げます。

本日、この場に参列した普通科302名の本校への入学を許可するとともに、新入生と保護者の皆様に心からお祝いを申し上げます。北條学年主任をはじめ9名の一学年担任団はもちろんのこと、本校のすべての教職員や先輩達もこの日を心待ちにしていました。

本校は1956年に開校し、今年で69年目を迎え、更に、学校法人北海道科学大学が百周年を迎える年に、君達は入学しました。この記念すべき巡り合わせは、君達にとって決して無縁のものではありません。まず何より、この新校舎は百周年を記念する事業の一環であり、校舎の目の前にある旧大学図書館は百周年記念会館「HUS+H」としてリニューアルされ、高校生も自由に活用できるようになりました。更に、これからの一年間、百周年を記念する様々なイベントが企画されています。高校時代に培った人間関係は一生続くものですから、高校卒業後に同期や先輩達と再会した時、「あの時、こんな事があったよね」と語り合えるネタがたくさん見つかるでしょう。

わが法人は、この百周年の年を単なるゴールとしてではなく、新たな百年に向けたスタートの年であると捉えています。来年4月には、大学の工学部情報工学科を情報科学部として独立させ、北海道におけるICT人材の育成を支える拠点となることをめざします。また、手稲駅近くの「てっぽくひろば」と呼ばれた土地を取得していることはマスコミ報道されています。ちょうど君達が大学に進学する2027年、そこに理系がメインであった本学が、文系色の強い新学部を設置し、いよいよ本当の意味での総合大学となります。

社会は激しいスピードで変化しています。漫然と佇んでいると、変化の風は厳しく身に突き刺さります。是非、我々とともに変化の風を背に受けて、一度しかない人生で自分に何ができるのかチャレンジしてみませんか。本校の新しい教育活動は「高大一体教育」という言葉で表現されています。高校と大学があらゆる教育資源を総動員して、時間をかけて本校生徒を育てようとするものです。誤解を避けたいのは、ただ単に本校生徒を北科大に誘導しようとしているのではありません。北科大というレンズを通して大学での学び、大学卒業後の人生を様々な角度から見つめ、時間をかけて自分の人生を築き上げてもらいたいと考えています。中学校までも、キャリア教育として様々な職業や進学先を学んできたと思います。しかし、社会は君達が想像するより遥かに深く、多様で面白い。まだまだ知らないことがこの世には溢れています。様々な取り組みの体験を通じて、この世を幅広く知ってもらうことが高大一体教育の狙いです。その結果として、わが大学が選ばれれば幸いですし、遠く旅立つ生徒が沢山現れることもまた、是非とも応援したいと考えています。

この春の卒業生は、北科大に105名が進学しました。短大が募集停止となって以降、初めて百人台を超える嬉しい結果でした。その一方で、国公立大とともに、「早慶上理・GMARCH・関関同立」といった言葉で呼ばれる、いわゆる難関私大に合格する生徒も増えました。こうした進路の多様性は、本校の最もめざすところであり、その質をさらにレベルアップすることを目指しています。

先日、本校教諭からとてもうれしい話を聞きました。たまたま出会った卒業生に、「高校3年間で先生達から聞いた話の中で、今でも記憶に残っている言葉はある?」と聞いたら、「入学式の校長式辞での言葉をずっと覚えてます。」と答えてくれたそうです。決して作り話ではありません。生徒が忖度したわけでもないと思います。その言葉を君達にも紹介します。

「角が取れて丸くなる」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。一般的には良い意味で使われる言葉です。ところが、「角を取って丸くなったらダメだ」という考え方もあるのです。では、どうすれば良いのでしょうか。この世に完璧な人間はいません。例えば、とても自己主張が上手な一方で、人の話を最後まで聞くのが苦手な人。誰に対しても優しくできるけれど、いざという時に自分で決められない人。とても大胆な行動ができるけれど、しっかりした準備をするのは面倒がる人。長所と短所は裏表です。角を取るとは、自分の突出した部分を削り取ることです。それは、他人とぶつかることを避けることにはつながるでしょうが、自分の可能性を消してしまうことでもあります。丸くなるもう一つの方法、それは、角を取るのではなく、角を増やすというやり方です。先ほどの例で言えば、自己主張もするけれど、それ以上に他人の話を聞くことができるようになる。誰にでも優しくするけれど、時には意見の対立を恐れずに自己決定できるようになる。しっかり準備した上で、果敢に挑戦するといったイメージです。角を取ってできる丸は、限りなく小さくなるしかありませんが、角を増やしてできる丸は無限に大きくなる可能性を持ちます。高校三年間で自分の角を一つ一つ増やし、角を増やして丸くなっていってください。

 つい先日、私は「日本の社会も、大きく変わろうとしているな」と思った出来事がありました。突然ですが、1本の映像を見てください。

    (ニュース映像視聴)

国内史上初の民間ロケットを目指したカイロスが爆発したニュースです。予想外の事態の進展に動揺したのか、アナウンサーは「失敗でした」と明言しましたが、専門家や、何より、当事者であるこの民間会社の代表は、「失敗とは言わない」ときっぱり言っています。それはけして、逃げ口上でも、責任転嫁でもない、全く新しいことに挑戦しようとする者が持つべき基本的な考え方を示しています。ご覧ください。

 (ニュース映像視聴)

学校説明会でもお伝えした通り、本校では可能な限り生徒に多様な選択肢を用意し、生徒が挑戦する場を与え続け、たとえ上手くいかなくても再び立ち上がることが最も重要と捉えています。また、ある専門家によると、ロケット技術は確かに難しいですが、地上に置き換えれば基本的には運搬手段であるトラックと同様であり、運ばれるものこそが重要です。カイロスが宇宙に運ぼうとしたものは人工衛星でした。実は、わが大学には人工衛星に関連する技術を専門とする研究者がおり、その研究室が開発に関与した衛星が実際に宇宙空間で活躍しています。十勝の大樹町を拠点とする民間ロケット開発会社であるインターステラーテクノロジズの稲川社長は、本学工学部の客員准教授として在籍しています。宇宙という、とても遠い存在への入り口が、実は目の前にあるという事も記憶しておいてほしいと思います。

終わりになりますが、本日の入学式に出席いただいた保護者の皆様に心からお祝いとお礼を申し上げます。教職員一同、新入生全員が「北科大高校に来て良かった」と満足感を胸に卒業する日まで、全力で支え続けます。そのためにも、保護者の方々との日常の連携を密にし、いつでも本音で相談しあえる関係を作り上げたいと願っております。私も一人の親として子供の高校生活を見守り、親子の距離感の保ち方の難しさを痛感しました。「高校生になったのだから、自分で判断して行動できるようになってほしい」という期待感。その一方で、「言うことは一人前になってきたけど、やることは相変わらず子供のままだな」という現実感。その狭間で、どこでバランスをとるべきか悩んだことを思い出します。そんな場面に出会った時、ある時は担任や部活動の顧問と、ある時は親同士で、本音で語り合えることが安心感や新たなアイデアを与えてくれます。そんな関係を作り合える学校となることを願っておりますし、努力したいと考えております。

 改めて新入生の皆さんに伝えたい。高校生までは、あらゆる面で人間としての基礎が形成される時期です。部活動にたとえれば、練習試合です。負けてもいい。しかし、負けから何を学ぶのか。負けたままでは終われないと本気で思えるのかが本当の勝負です。皆さんが北海道で育った若者らしく、スケールの大きな人間に成長することを祈って、入学に当たっての式辞と致します。

 

                         2024年4月5日

                            北海道科学大学高等学校

                           校長  橋 本 達 也